いったい!な、なんだ。「ま、松林。」 さっきまで、会社で資料づくりをしていたはずだ。頭のなか、そして手の指先には、ついさっきまで、パワーポイントで作成していた資料作成のキーボードの感触がのこっている。 「おれは、なにしてた?」 「なにって、ずっと話をしていて、ビール飲んだところで、柴さん急に寝ちゃったじゃない。覚えてないの?」 カレンダーを見ると、日付けは昨日にもどっている。 「おれ、かえるわ。」 「どうかしたの?なんか、うなされていたけど。」 「大丈夫だ。」 柴は、急速に酔いがさめていくのを感じた。正確にいうと、飲んでいないのだから、酔いが醒めるもなにもない。 上井草の駅で待っていると、目の前を下りの急行、酔客をのせた特急小江戸号が走り抜けていく。走り抜けていくと、駅には静寂が訪れる。 機械的な駅のアナウンスが響き渡るだけだ。 酔った、そしてネクタイの胸元も緩めがちな40代くらいの男性が、30メートル近くある、木製のベンチへに横になって、なにやらムニャムニャいっている。 2本ほど、上りの急行が、すぎていったあと、普通の西武新宿行きがホームに滑り込んできた。 柴はその先頭車両にのり、運転席よりの席に腰をおろした。 はたして、きのう経験した、たとえば松林とのこととか、あれはいったいなんだったんだろう。 柴は頭が混乱していく自分がよくわかった。 では、あの宝くじは? 内ポケットの財布を取り出してみる。折り畳み式の財布のファスナーをあけて中を見てみる。 キャッシュカードと一緒に、ATMで入金した際の伝票がはいっている。そこには、たしかに、スクラッチ宝くじがあたった痕跡といっていい、数字が並んでいる。 たしかに、当たっている。 そして、カバンには、1億円があたっているかもしれない宝くじがある。 では、プレゼン用資料をつくっていた自分はなんだったんだろう。 柴は、会社に行ってみることにした。 ジャンル別一覧
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